真冬のコンビニバイトアコガレ【正月編】

いくらでもアコガレるぜ!もう病気だから仕方ないの。
【年越し】
上京してきて3年目、ちょっとこみいった事情で、お正月に帰省できなくなってしまった。
お酒でも買ってきてガキ使見るかな、とか思っていたら、アルバイト先の店長から懇願されて、大晦日の23-5時で労働することになってしまった。海外の労働力、まさかの全員帰国だそうで。店長だって家庭あるもんねえ。息子さんが小4だって言ってたもんな。どう考えても私が適任だ。時給がありえないぐらい高額なのも手伝って、引き受けることにした。グッバイ、ガキ使。
ネタになるかなあと思って、友人たちに笑って話しておいた。けっこう深刻な顔をされた。ふうん、君たちは宅飲みからの初日の出ですか。ふつうにうらやましい。くやしいからたくさん働いてたくさん稼いでたくさんいい服買ってやるよ。
とはいえ、私鉄の小さな駅から徒歩10分のコンビニである。シフトに入ってから20分間、まったくなにもおこらない。人件費の無駄だから正月くらい店閉めちゃえばいいのにね。そろそろ紅白もクライマックスの頃だ。EXILEがくるくる回ってるのかな。
23時35分、ひとりだけお客さんが来る。おそらく大学生。うわコンドーム買ってったよ。「年が変わる瞬間は君と繋がっていたい」みたいな感じですか。おしあわせに。
23時45分、都道府県を全部数え上げてみるも、2つだけ思い出せない。北関東に弱いのである。あ、群馬と栃木。そして時計を見ても、まだ全然時間が経っていない。ぜつぼう。
55分、東京23区に挑戦してみる。さすがにちょっと住んだだけじゃ覚えられないよ。墨田区ってなに。
そろそろカウントダウンだ。
なんとなく、心の中で数をかぞえる。2010年、私はずいぶん働きました。目の前の景色は変わらない。
と、ドアの開く音がする。
「さーむい!」
近くで宅飲みをすると話していた友人たちが、ぞろぞろ入ってきた。
「あ、ほんとに働いてる」「お前さみしいやつだな」「あけおめー」「どうせひまだろうからきてあげた」
お酒の値下げはできないことを再三言い、けちだと文句を言われた。知らないよー。30分くらいとどまっていたのだろうか、結局みんな「がんばってねー」と帰っていった。木下君(仮)、あの会に参加してたんだ。ふうん。
そのあとの5時間は睡魔と闘いつつ、適当に過ぎた。交代のバイト仲間に「あけましておめでとう」を言って自分の部屋に直行し、化粧を落として眠りについた。夢はみなかった。
昼過ぎに目が覚めた。受信ボックスにはメールが4件。行かなくなったサークルの後輩とかゼミの同期とか、なんともいえない知り合いから「あけおめメール」が届いている。まったく、律儀な人たちだ。
8時頃に木下君(仮)からもメールが来ていた。ちょっと珍しい。
日の出の画像と、「バイトおつかれさまです。今年もよろしく。」
うまい言葉が見つけられなかったので、当たり障りのない返事をしてしまった。