たぶん明日は来る

ホモソーシャルへのあこがればなしの続き。
フリッパーズ・ギターが好きなのもそれなんじゃないかと思えてきた。渡辺満里奈が入ってぐちゃぐちゃになった、というほんとかうそかわからないおはなしも、あこがれを加速させますね。

数ヶ月前にこの動画を見るまでZAZEN BOYSってこういうメンバー構成だと知らなかくて、男性だけのバンドだと思っていた。田渕ひさ子がまったく非性的な感じでこの中に入っていて、対等に楽器を鳴らしているのがうらやましすぎて見ていられない。だから、このPVが最後どうやって終わるのか知らないんだよね。う〜ん、かっこいい。いいな〜。
話は変わって。
アルバイトに行く電車の中で「空中キャンプ」を聞いていて、かなりどきどきした。地震のあとくらいからずっと聞いているけれど、心にしみる音楽だね。高校のときに友人が貸してくれていたというのにまともに聞いてこなかったのをとてもとても反省した!
と同時に、ぜんぜん雰囲気は違うけど、アルバム一枚で世界のいろんなことを飲み込んで、やさしく肯定して背中を押すかんじが「Life」に似ているなあと思った。それで、そういえば地震があってから「Life」をアルバム通して聞いていないことに気づいて、電車を降りてアルバイト先に向かういつもの道より少し遠回りして何曲か聞きながら歩いた。
1995年当時6歳だった私は、そのころのことなんかほとんど憶えていない。阪神大震災のあとに地下鉄サリン事件が起こり、暗い世の中だったと聞いたことはある。で、それにひとり細い体で立ち向かっていったのが小沢健二だったんだとも(もうこれを書きながらウルウルしています)。小沢健二は「Life」のあと「球体の奏でる音楽」を出すまでは、すばらしくポップな楽曲をシングルでいくつも世に送り出し続けた。それがだいたい1995年くらいのできごとなわけさ。
このあいだの地震が起きた翌日、公式サイトに小沢健二本人のメッセージが載った。なんていうのかな、うまく言葉にできないんだけど、心がざわざわした。ほんとに同じ時間をかれが生きていて、私たちに言葉を伝えたいと思っていることが信じられなかった。去年のツアーをやって、はいおしまい、じゃないし、ましてや「あの人は今」じゃないんだよな。日本にいる私たちの日々の営みに、小沢健二がかかわっている。
震災をきっかけにこんなこと言ってる自分に違和感ありありなんだけど。
うーん。きょうひさしぶりにきちんと「Life」を聞いて、やっぱり私にとってこのアルバムは大切すぎて「大切」なんて言葉じゃ足りないな、って思ったわけです。「共感」でも「あこがれ」でもなくて、この感情をなんていえばよいのか、ほんとわかんないんだけど。
私はあの地震でそれなりに心が傷ついたと思う。程度を誰かと比べるまでもなく(そういうのは、今はあまり意味がない)。昨晩の長い長い余震、ほんとに怖かったね。3月11日に「死ぬかもしれない」って本気で感じたのをありありと思い出してしまった。
「自粛なんかしないで経済を回そう」「被災地は大変」「農作物の風評被害をなくそう」というのはとても大切で重要なことだ。私はなるべく家にこもらないで外でお金を使うようにしている。いまボランティアに行って役に立つ技能が自分にあるとは思えないので、せめてと思って5000円を募金した。小さな力でも、大きく傷ついた場所とかひとのためになりたいと思っている。
でも、じゃあ東京の自分は地震でまったく平気だったのかっていうと、違うでしょ。で、大きいことの前で、被災地にいない個人が受けた傷なんて簡単に見過ごされてしまう。それは健康的なことじゃないな、と思う。
私は東京にいるから東京のことを書くけど、あの日の東京はたくさん揺れて、電車は止まって、電話もメールも使えなかった。いまでも電気はぎりぎりで、きのうみたいな余震だってある。明らかにいままでの日常じゃない時間を、この1ヶ月の私たちはすごしている。よっぽどタフでもなければ、気持ちになんの変化もなくてすむことなんて難しいんじゃないのか。で、それに気づいてどうにかできるのは自分くらいしかいないんじゃないか。
けさ「Life」を聞いて泣きそうになってしまった。あのアルバムで歌われる世界がパラレルワールドだとか過去のものだとかは思わない。逆じゃないかな。現実にある時間の流れぜんぶを愛していいのさ、っていうムードが、あのへなへなした声とあいまって私の脳に溶けていったのさ。はじめて気持ちが緩んで、ああやっぱりプロパーに辛かったんだよねえ私、って思ったのさ。
もちろんこういうことばかり考えていられるわけでもない。きょうの関心ごとといえば、レストランで何十分も料理が出てこなかったことと、借りた母の自転車が盗難に遭ってものすごく怒られたことでしたから…。そうして毎日は続いていくのさ。
ただただ思うのは、生まれてきて「Life」に出会えて、ほんとによかった。ってことさ。